遺言書は本当に必要?作らないと困るケースを行政書士が解説します!

遺言書とは、自分が亡くなった後、自分の財産を誰にどのように遺すのかを家族に伝える、最終的な意思表示です。
人は生きている間、自分の財産を自由に使うことができます。欲しい物を買ったり、食事を楽しんだり、大切な人にお金を渡したり、寄附をすることもできます。これは誰もが当たり前に理解していることでしょう。
しかし、亡くなった後、その財産はどうなるのでしょうか。本人が何も遺していなければ、周囲の人にはその意思を知ることができません。
そこで、生きているうちに、自分の死後に財産をどのように扱ってほしいのか、誰に引き継いでほしいのかを明確にしておく必要があります。これが「遺言」であり、その内容を文書として遺したものが「遺言書」なのです。
遺書と遺言書はどう違うの?
「遺言」と聞くと、末期がんなどで余命がわずかな方や、事故などで死に直面した際に、自分の想いや感謝、無念の気持ちを家族に伝える最期の手紙を想像する方もいるかもしれません。こうした手紙はいわゆる「遺書」にあたります。
遺書は気持ちを伝えるものではありますが、一般的に法的な効力はありません。財産や権利、義務の行き先を法的に決めるものではないのです。また、遺書は混乱や緊張、恐怖など、特別な状況の中で書かれることが多いのも特徴です。
一方、遺言書は、生前に築いた財産を、誰に何をどのくらい残すのかをあらかじめ決め、文書として残すものです。冷静で落ち着いた状態で作成され、遺書に比べて事務的・実務的な性格を持っています。
遺言書を作ることを縁起が悪いと感じる方もいますが、そのような心配はありません。正しい方法で作成された遺言書は法的に有効であり、第三者に対してもその意思を明確に示すことができます。
遺言書の種類
民法上、遺言書は大きく「特別方式」と「普通方式」の2種類に分けられます。
特別方式の遺言は、死亡の危急に迫った場合や、伝染病隔離者、船舶遭難者などが行う非常に特殊なものですので、ここでは割愛します。
一般的に「遺言書」と呼ばれているのは、普通方式による遺言です。普通方式の遺言は更に、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類に分けられますが、秘密証書遺言は利用されることが少ないため、ここでは自筆証書遺言と公正証書遺言について説明します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。
費用がかからず、いつでも自分の都合で作成できる点が大きなメリットです。
一方で、法律上の要件を満たしていないと無効になるおそれがあり、原則として家庭裁判所での検認を経なければ、金融機関の解約や不動産の名義変更ができない場合があります。また、紛失や改ざん、隠匿のリスクも否定できません。
本人ひとりで作成するため、意思能力や真意が争われることもあります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与し、証人2名の立会いのもとで作成される公文書です。
法律の専門家が作成するため、遺言者の判断能力や本人の意思について高い証明力があり、紛失や改ざんのおそれもありません。家庭裁判所での検認が不要なため、相続手続きを速やかに進めることができます。
原本は公証役場で厳重に保管され、遺言者には正本や謄本が交付されます。
一方で、作成には費用や時間がかかり、証人を2名用意する必要がある点がデメリットといえるでしょう。
※公正証書の法的効力や作成方法については、「公正証書作成サポート」で詳しく解説しております。
遺言書の効果
遺言書にはさまざまな効果がありますが、最大のメリットは相続手続きをスムーズに進められる点です。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成し、全員の署名押印や印鑑登録証明書の取得などが必要になります。相続人が多い場合や、疎遠な相続人、高齢者や遠方に住む相続人がいる場合には、大きな負担となることもあります。
法的に有効な遺言書があれば、原則として遺産分割協議書を作成せず、遺言書の内容に従って相続手続きを行うことができます。
たとえ財産が少なく、相続人同士の関係が良好であっても、亡くなった方の明確な意思が文章として残っていれば、不信感や誤解から生じる争いを防ぐことにつながります。
遺言書を書いておいた方が良いかた
おひとり様や子どもがいない夫婦
相続人が兄弟姉妹や甥・姪となり、面識のない相続人と遺産分割の話し合いをしなければならない場合があります。
※おひとり様や子どもがいない夫婦については、「子供がいない夫婦 相続人が兄弟姉妹や甥や姪になるケースを解説します」で詳しく解説しております。
相続人の中に判断能力のない方や行方不明者がいる場合
成年後見人の選任や不在者財産管理人の選任、失踪宣告などが必要となり、相続手続きに長期間を要することがあります。
前婚の相手との間に子どもがいる方
相続人同士が面識のない場合、感情的な対立から紛争に発展し、調停や審判に進む可能性もあります。
相続人以外に財産を遺したい方
内縁関係や同性パートナー、介護をしてくれた嫁や孫、第三者や寄付先などは、遺言書がなければ財産を遺すことができません。確実に想いを実現するためには、遺言書の作成が必要です。
まとめ
遺言書を作ることは、自分のためだけでなく、残される家族や大切な人への思いやりでもあります。
「自分の場合はどうなるのだろう」
「本当に遺言書が必要なのだろうか」
そう感じたときが、遺言書について考え始める最適なタイミングです。
早めに備えておくことで、将来の不安を一つ減らすことができます。
遺言書が必要かどうかは、家族構成や財産の内容によって、人それぞれ異なりますので、なかなか考えても分からない場合は、一度専門家に相談してみるのもいいでしょう。
